『サーフ ブンガク カマクラ』の収録曲タイトルが、世の中のタイトルワークで至高だと思っています〜!
江ノ島にはちょっとした思い入れがある。
『Autotatic』が流れるハイラックスサーフの後部座席で、父と海水浴に向かったのも江ノ島。
とりあえず小田急線に乗っていれば江ノ島に着くことに気がついた部活帰りは、iPod shuffleで永遠に『ユグドラシル』を聴いていた。
経済的にも資格的にも唯一乗れた中古のスーパーDioで467号線をひたすら南下していた深夜には、鳥になる前の[Champagne]を口ずさんでいた。
時間だけは持て余していた大学生当時の彼女を江ノ島まで2時間かけて送迎する車内では『吹き零れる程のI、哀、愛』『TEENAGER』『SUPER BETTER DOG』『Love & Groove Delivery』『サーフ ブンガク カマクラ』などを流していた。
産まれも育ちも神奈川の生粋のベッドタウン民である邦楽小僧の私は、江ノ島への交通手段とBGMから当時の記憶を呼び起こすことができる。
” 波音の彼方に響く声 揺れるエスカー ”
当時、目覚まし曲にするくらいお気に入りだった『江ノ島エスカー』を聴きながら数年ぶりに私は小田急線で江ノ島へ向かった。
本来ならカワサキにまたがりたいところ(最早伝わらなくていい)だが、当然、サ活後にビールを呑みたいからだ。
終点駅である片瀬江ノ島駅には南改札しかなく、皆が一方向に歩いていく。
膨らませ済みのうきわに身体を通した小学生、昨日の日焼けも治まっていない赤黒い上裸、結局恥ずかしくてナンパは出来ないであろうヤンチャな三人組、それで砂浜歩くんかいという高さのサンダルを履いたSNS映え。
十人十色のウキウキした背中を見ながら、やっぱり私も高揚してしまう。
地下道で海水浴組と別れ、弁天橋を目指す。
夏全盛の紫外線を遮るものは何もなく、橋を渡るころには1セット目が完了している。
島内に入り通常であれば商店街を抜けて神社を目指すところだが、目的地が別にある私たちは人の流れをいなして細い路地を左に曲がる。
身近にあったせいか当たり前のことを意識していなかったが、江ノ島も漁港なんだと感じられる道を抜けていくと、ポツポツとローカルな店が現れ、これまた恐らく島民のおっちゃんが上裸で昼から一杯やっている。
そんな島民ルートの突き当たり直前、さらに細い路地に入るとようやくお目当てのエノシマサウナに辿り着いた。
さあ、もう我慢できないぞ。
出迎えてくれたテラスハウスに出てきそうなイケメンあんちゃんの説明を受け、個室へ向かう。
まずは汗を流し、いきなり地下水汲み上げというドラム缶式水風呂に飛び込んでやった。
水風呂からはじまる。なんとも夏らしいじゃないか。
同行者がまったく水風呂から出てこないので室内を物色しよう。
施設の間取りは磯野家に似ており(わかりづらい)、以前は波平とフネの寝室だったであろう内気浴スペース(わかりづらい)にととのい椅子が並ぶ。
部屋にはカリフォルニア風なビンテージ調のオシャレな小物に溢れていた。
七里ヶ浜の友だちの家もこんな感じだったな〜と思いながら同行者を待つが、まったく出てこない。海に還ったのかな。
ようやくデイビージョーンズが陸にあがってきたところで、いよいよサウナ室へ入室。
フィンランド式でヴィヒタの香りが蒸気の溶けこんでいる。
セルフロウリュウをすると、ややマイルドだった室内の体感温度が一気に上昇する。
すでに開いていた汗腺が覚醒し、汗かまとわりつく蒸気か解らないほどの水分に身を包まれるが、適度な室温でいつまでも入っていられる気がする。
曲線を辿るようなサウナ体験。デビュー戦に最適な構成ではないだろうか。
2回目の水風呂にダイブし、しばらく内気浴でエアコン直風位置の奪い合いをしたあとで、イケメン兄ちゃんが教えてくれた縁側に出てみることにした。
磯野家と照らし合わせてもぴったりの位置にある(わかりづらい)
流れてくるヴィヒタ添えの潮の匂いと、やたら近い隣の家との隙間から容赦なく差し込んでくる日差し。
これはこれで気持ちいい日光浴ではあるが、もはや低温サウナでしかないので足早に撤退(夏の昼でなければ絶対気持ちいい)
蒸される数の倍、水風呂に入るという三百六十五歩のマーチ的な変則セットをこなし、あっという間に120分が経過する。
異常な空腹に耐えながらも、久しぶりに江ノ島神社までの商店街散策を楽しみ、サ飯を探す。
露店で炉端焼きもいいが、おじさん、もう屋内に行きたいよ。
やっと入れた店でしらすと江ノ島ビールを掻き込み帰路に向かうが、もう少し余韻の中にいたい私たちは小田急ではなく敢えての江ノ電で。
” 心の臓がわずかに逸るビート 踊りますか ”
ほろ酔いだったためか、誤作動を起こしたポケットのスマホが『江ノ島エスカー』の続きを唄いはじめた。
どれだけゴッチがねっちょり叫んでも起きることのなかった私の代わりに、いつも彼女が目覚ましを止めてくれていた。
どれだけ不満だっただろうか。今度聞いてみようか。
なんせ彼女は、今も起こし続けてくれる優しい奥さんなのだから。
エノシマサウナ
※記事の内容は取材当時の情報に基づいています。