迷ったら120分コースにするべき!
受験期に何度か訪れたことがある湯島には「由緒ある落ち着いた街」という印象があったのだが、どうやら私はこの街を半分しか知らなかったらしい。
私の中にある湯島、天満宮あたりから東側。
下町を貫く春日通りと、カップルや観光客が陽気な上野公園沿いの2つの大通りに挟まれた扇状地に、やたらとディープな歓楽街がある。
ビルに囲まれた幅狭な路地はやや薄暗く、表通りに比べ極端に人通りが少ない。
宵待ちの静寂がかえって不気味さを漂わせている。
学問のみちから一瞬で変わる景観を楽しみながら仲町通りを進むと、ちょうど中間あたりに「RED° E-SAUNA UENO」がある。
少しビルが奥まっているが安心してほしい。本能をかりたてる看板の数々が視線を引き上げてくれるおかげで見落とすことはほぼないだろう。
完全な偏見だが、サウナや温泉は漢字やカナ表記の英語だとちょっと期待値が増す。
(醤油ラーメンを「醤油らぁめん」と書くとなんか美味しそうな気がするのと同じ)
「らぁめん理論」と名付けた完璧な持論は2時間後、このサウナによってに跡形もなく崩れ去ることになった。
3階で受付を済ませ個室に入ると少し肌寒さを感じる。
後になってわかるが内気浴の際に心地よい設定になっているようだ。
これはまだ序の口。
このサウナ、我々サウナ愛好者を唸らせる工夫が随所に詰まった本格派であった。
その素晴らしさを1つずつ紹介していきたい。
まずは必要な設備だけで構成されたムダのない空間。
ディープリラックスに没入できるよう、色やモノといった情報量を敢えて削ぎ落としているのだろう。
そして、都内の個室サウナでは少数派であろうキンキンの水風呂がある。
私もいい歳した大人である。
さまざまな障壁を想像できるが、水風呂の設置を断行した施設に皆を代表して感謝を申し上げたい。
(ありがとうございます‼︎‼︎‼︎‼︎)
光のカーテンが差す水風呂はまるで、冒険の末に遺跡で見つけたお宝のように神々しい。
サウナ室の窓から正面にはスマートテレビがあり、なんとスピーカーで室内に音声が連動している。
もちろん好きな映像や音楽を楽しめばいいが個人的にはヒーリングミュージックを推したい。
(一定時間すると画面も暗くなるという徹底ぶり)
極めつけはそのコースプラン。
こういった個室サウナは80〜90分コースの施設が多いが、私のように1セット30分かけるのんびり屋にも嬉しい120分コースがある。
意識せず心地いいペースで入れるため時間からも解放される。
(さらに7Fのパウダールームは利用時間後も使えるので女性にも優しい)
100℃超えのサウナと15℃前後の水風呂という本格的な高低差でバッチリキマり、薄目で非常灯を見つめていた時にあるアイディアを思いついたのだが、これが世紀の発見であった。
サウナ室以外の照明を落とし、画面を夜空に変えてみる。
さらに情報は遮断され、持て余した知覚は自身の呼吸や心拍へと集中する。
ととのい中の無重力感も相まって、もはやここは湯島の銀河鉄道である。それは過言である。
すっかり満足した私たちはチェックアウトを済ませ、7Fの「WARP SQUARE」へ向かう。
休憩処にあたるこの空間がまたすごく、室内を囲う大型のプロジェクターには流水の映像が流れている。
寝転んだら最後、Yogiboの呪縛から逃れられない。
抑えきれないアルコール欲がなんとかYogiboの誘惑を振り切り、ようやく施設を後にする(あと10秒を10回ほど繰り返した)
「らぁめん理論」の破綻などすっかり頭にはない。
せっかくなので店探しがてらもう少し東京を楽しもう。
仲町通りを抜けると、ファミリーと観光客に溢れる上野公園の入り口にぶつかる。
大通りを渡り1本路地を入ると呑んだくれが肩を寄せ合うアメ横へとつながる。
湯島天満宮からほんの10分ほどの道のりで次々と景観が移り変わっていく。
限られた土地に異文化を押し込んだ混沌が、東京の魅力だ。
焼き鳥、海鮮、もつ焼き….。
さて、今日はなにをビールで流し込もうか。
RED° E-SAUNA UENO
※記事の内容は取材当時の情報に基づいています。